International GS Trophy 2008・チュニジア編その1

サハラ砂漠の砂は水のようスタックしたバイクを引き上げ助け合うまさにGSスピリットだ

 

外出自粛宣言特別企画!?

人生が変わってしまうほどの経験をしたインターナショナルGSトロフィー2008のおはなしチュニジア編です

ジェノバ港を出航し22時間の船旅

チュニス港につく数時間前

ベッペによるブリーフィングが始まった、アフリカにわたってから7日間の行程と注意事項など「水を大切にしろ」「バイクを壊すな」

ブリーフィング後に参加者数名がベッペに今後のルートについて説明を求める、するとこれからの日程が書かれたスケジュールと地図を僕らに見せてくれた。見たところでさっぱりわかりませんが(苦笑)

チュニジア・チュニス港に到着、参加者6名×5か国+マーシャル、スタッフ総勢40名の団体が入国をするのに2時間ほどかかる、その後は150キロ先のカイロウアンまで高速を移動、街灯の少ない真っ暗な道を2時間ほど走っただろうかガソリンスタンドに立ち寄る一同に給油するので当然ここでも時間を要するのだが給油後選手が待機している場所が膝上ほどの縁石を超えた路肩、そこへ行くのにフロントアップをして乗り越えていかなければならないそのさまを他国の選手も横目で見ている、まるで品定めされているようだ無言のプレッシャーの中無事に縁石を乗り越える、顔はすかしていたが心臓はバクバクだった

その後も暗がりのアスファルトを高速移動、やがてライトアップされた古城のようなホテルに到着する。三上さんが「楽しかったけどとてもじゃないけど自分の子供に同じことさせられないわ」ボソッとつぶやくのを耳にする

翌朝ホテルを出発この日は南へ移動

 

所々で休憩をはさむがそれ以外は40台のキャノンボール

マタマタという観光地で昼食をとり

クサールという砂漠のツーリストキャンプに到着

すぐ横にはサハラ砂漠が広がっていた

まるで防風林を抜け海に出たような景色、見渡す限り砂の海だ

ここでベッペより「チーム全員この先に止めてあるランクルの周りをを回って帰ってこい」と指令「タイヤの空気は抜いちゃだめだこの先もリムうちの可能性があるので規定値(フロント2.2キロリヤ2.5キロ)のまま行きなさい」これはこの先の行程すべてにおいても同様のことだった

見えるだろうか?200メートルほど先に止まっている車、バイクと人、最初のチーム5名が砂漠にアタックしていくわずか30メートルほどでF800GSがスタック、派手にルースとを上げたそのGSはタイヤのほとんどを砂に隠し直立している

チーム同士で一台ずつ引き出していくがやがて他国のチームも手伝い始める、最初のチャレンジしたチームはランクルに届くことなく終える、他国選手も同様だった。自分たちの番になり松井さんより「ルートファインディングが重要だ砂の硬い場所を見極めて走っていこう」というアドバイスをもらう、走り出す前に硬そうなラインを見つけF800GSのアクセルを開ける、胸くらいの小さな砂丘のヘリのあたりが固そうだったためそこをつなげるようにライン取りをしていくアクセルを開けすぎるとリヤタイヤが空転をはじめ失速、アクセルを戻すとたちまちハンドルが左右に暴れだすその境いを探りながら進むが下りの小さな砂の吹き溜まりでフロントタイヤの2/3が埋まりスタック、周りを見ると皆も同じような状況になっていた他国選手達が引っ張り上げてくれ進ませるが今度は10メートルも進まないうちに前後とも砂にバイクの1/3を飲み込まれる、バイクを倒しタイヤの下の穴に砂を落とし起こすバイクに乗らずに進もうとするがリヤタイヤが空転をはじめあっという間に直立するほどに埋まってしまうランクルへのルートはあきらめスタート地点まで助けを借りながらなんとか戻る。この広い砂漠と広い空を前に絶望的な気分になる

チームUSAのジャーナリスト枠で参加していたジミールイス、元AMAスーパークロスライダーでダカールラリーにBMWワークスで出場2位を獲得しているスーパーエキスパートライダーだ、その彼もランクルまでたどり着くことなく引き返してきた、それでも最も距離を稼いだのは言うまでもないがそれ以上に見事だったのがスタックした後のリカバリーだ、スタックしたマシンから降りクラッチとアクセルワークで200KGを超えるF800GSを瞬時フロントアップしてトラクションがかかりやすい場所まで移動させるまさに神技

クサールのツーリストキャンプに戻り荷物を設置されているテントに運び込む、ウエアーを脱ぎリラックスしていたらベッペより呼び出し、「これから最初のチャレンジをおこなうからヘルメット被ってバイクにのって先ほどの場所まで来い」と、たどりつくと砂漠の入り口で説明が始まった、日が傾き砂が締まり走りやすくなっている数キロ先の遺跡までこのまま移動するとのことだが走り始めるが先ほどと変わらずやはりスタック、今度は一人でリカバリーをしなければならない、入り口からわずか200メートルも進んでいない前方に行っている選手もいるが自分より後方でスタックしている選手も多くあちこちからリヤタイヤから砂煙が上がりしまいにはオーバーヒートを起こし水蒸気を上げるバイクまで現れる、息を一瞬とめクラッチとアクセルワークでマシンを前方に進める、推進力を感じる少し前にギアを2速にあげアクセルを開けると大きな船が海の上を進み始める様にゆるりと砂の上を航海していくが轍にハンドルをとられアクセルを一瞬戻した瞬間にスタックやはり200メートルも進んでいない、青いラリースーツのマーシャル(めちゃくちゃうまいイタリア人ライダー)その彼が先に行っているライダーたちに戻れと指示を出している、自分もマシンを反転させ進もうとするが多くの轍を踏み分けながら進まなければならない。息をとめ一瞬の脱出からギアを2速に上げる砂の上にバイクが浮かび始めたころに轍でハンドルをとられるがアクセル戻すことなく暴れるGSに必死にしがみつきやっとのことで入口にたどり着いた。明日からどうなるのだろうこの日2度目の絶望感

遥か地平線サハラ砂漠に沈む太陽

夕食をとっていた会場でベッペが突然ブリーフィングを始めた、サハラで皆この困難を体験した、明日からは楽なツーリングメインでのGSトロフィーにするか、明日も困難にチャレンジをするGSトロフィーにするか君たちに選んでもらいたいという内容だった、全選手の答えはチャレンジだ「イエーッ!」そうだ自分はGSトロフィーというチャレンジをしに来たのだ、アルコールの酔いに任せて拳を高く上げ叫んだ

真っ暗なテントまでの道、日が落ち外気は冷たい、まだレストランに残っている他国選手たちの話し声が聞こえる、緊張からの解放とワインで酔いが回っていることを感じながら寝床につく

明日は一体どんなチャレンジが待っているのだろう、考えると目が冴えてくるような気がする

持ってきたi-podをかける、奥田民生の「花になる」だった

つづく

 

 

 

 

 

 

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